2021/8/18 思うこと

ずいぶん前のことになりますが

マ・レルラ デザイナーの
阿部真理です。

こちらにおたずねいただき
ありがとうございます。

昨日懐かしい方から電話をいただきました。

30年以上も前、勤めていたDCブランドは、母子家庭で小さい二人の子供を抱えた身には過酷すぎ、フリーになりました。
週に三日行く会社、一日行く会社が二社、自宅でする仕事、フリーのニットデザイナーを契約で必要としてくださる会社が、当時はたくさんありました。

電話は、十二年にわたり、一番長く濃く関わらせていただいた会社の、もう引退された社長さんからでした。
思い出、エピソードがたくさんありすぎるのですが、社員を大切にする姿勢、メーカーさんが、訪ねてきたら、仕事を求めているのだから、大きさにかかわらず、それに応え、仕事を依頼する、ということ、取引先とのお付き合いのこと等々たくさんたくさん教えていただきました。

私が旅好きだったせいで、利益が出たから、旅行に行こう、ということになり、北海道、台湾、香港等、私がツアコンの役割を担い社員全員で毎年旅につれていってくださいました。

顧問契約を結んだときは、子供は二歳と0歳で、下の子はよく熱を出しました。麻疹のあとすぐおたふく風邪にかかり、1ヶ月仕事場に出られないとき、嫌な顔ひとつせずに「他にあなたの仕事を出来る人ははいないんだから待ってるよ」と言っていただいたことは、今、私もスタッフに同じ対応が出来る指針になりました。

経理をされていらした奥さまと共に本当に家族のようによくしてくださり、自宅にも子供をつれて遊びにうかがいました。

とてもチャーミングで自然なユーモアが板についていらして、新しい取引先などにデザイナーとして私を別室から呼ぶ際には、「うちの愛人を呼んでくるから」との表現に、「社長、私の父と三歳違いなんですよね」と言ったら、それからは、「お嬢さん」と言う呼び名に変わってました。(今だったら問題発言ですね。そんな感じはまるでなく、大事にしてくださる感ありで)

そこでそのブランドにあわせたデザインをしているうちに、自分のブランドだったら、こんな服を作りたい、こんな人に着てもらいたい、素材にとことんこだわり、ハンドメイドで作りたい、と言う思いが沸き上がって、集約され、自分のブランド、マ・レルラを立ち上げたのが28年前。
しばらく掛け持ちで仕事をさせていただいていましたが、高島屋さんが新宿に出店される際、マレルラを取り上げてくださり、箱のショップをオープンしたと同時にそのアパレルは、卒業させていただいたのでした。

電話は、当時懇意にしていたニットメーカーの社長さんが、旅立たれ、その葬儀の席で私の話が出たよ、ということでした。
「あんなに本気で仕事するデザイナーはみたことなかった」と。

好きなことを仕事にして、楽しんで精一杯してきただけなのに、二十年以上前のことを覚えてくださってそんなことを言っていただけるなんて。

若くて生意気でとんがっていて、やる気だけはある当時の私。
本当に人に恵まれ、守っていただき、たくさん教えていただいたので、今がある、色々なことがあったけどラッキーなのだ、と改めて実感した幸せなひとときでした。

感謝しかありません。

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